研究内容

新しいネットワークの探求 (モデル・方式・展開)

次世代インターネット

  • インターネットの負荷激増と過度の集中はとどまるところを知らず、クラウドをもってしても過負荷による破綻が報告されるようになってきている。それに対処する方策として、下記が注目されており、それぞれについて取組みを進めている。

    • 複数クラウドを連携させるインタークラウド(Intercloud)。
    • 大域的クラウドと、より利用者側に近い局所的で小規模なクラウド(Cloudlets)、各種ネットワーク機器を連携させるフォグ(Fog)ないしエッジ(Edge)コンピューティング。特に、コンテキストに着目した負荷分散、P2P技術との融合など。
  • 計算資源を仮想化するクラウド技術に並ぶものとして、ネットワーク資源を抽象化するスライシング(Network Slicing)がある。インターネット分野よりも5Gの移動体通信分野で技術的検討が先行しているが、まだ未解決の課題が山積している。まずスライスの動的割当て方式について、予備的な研究成果を挙げた。

高度IoTに向けた計算機ネットワーク

  • 「どこでもコンピュータ、どこでもネットワーク」という時代の到来に向けて、自律的・適応的・動的に構成を最適化していくネットワークの実現のために、次のような取組みを進めている。

    • アドホック・ネットワーク(Ad-hoc Networks)、センサ・ネットワーク(Sensor Networks)、遅延耐性ネットワーク(Delay Tolerant Networking、DTN)、コンテンツ指向ネットワーク(Content Centric Networking、CCN、Information Centric Networkingの一種)など、それぞれの方式の探求、および相互の融合。
    • 組込みシステムどうしの一時的・その場的なネットワークへのCCNの活用。
    • IoTでのセンサ・ネットワーク側だけでなく、アクチュエータ・ネットワークにおけるPublish/Subscribe型通信による経路制御。
    • 特に車々間通信、すなわちモビリティの極めて高いネットワークにおいて、DTNでのゴシッピング(確率的情報拡散)を発展させた確率的Publish/Subscribe型通信による接続性の確保。

ネットワーク・モデルと応用

  • スケールフリー・ネットワーク (Scale-free Networks) やスモールワールド・ネットワーク (Small-world Networks) など複雑ネットワークについて、工学的応用の探求を進めている。

  • 自律分散ネットワークにおけるセキュリティや信頼性の確保、特にノードの相互補完によってネットワークの信頼性を全体として高める方式について、成果を挙げてきている。

  • 複数のネットワークが密接に張り合わされた多重ネットワーク、特に相互依存ネットワーク(Interdependent Networks)という極めて新しいテーマについて、異常や障害の伝搬、協調(合意形成)の創発などを題材に、探求を進めている。

  • 単純な個体から構成される群れが知的な挙動を示すいわゆる群知能のテーマについて、個体が学習するのではなく、相互作用のネットワークが学習して知的活動を創発するという新しいアプローチで、予備的な成果を挙げつつある。


過去のテーマ

計算機ネットワーク

  • インターネットでは負荷の軽減や分散が最重要な課題となっており、一つの対応策として複数サーバによるコンテンツ分散ネットワーク(Content Distribution Networks, CDN)がある。その高度化に向けて次のような取組みを進めた。

    • DNSを活用して最適サーバ選択を自動化するCDN。ソフトウェアダウンロードサイトや全世界日食リアルタイム中継サイトなどですでに実用化。
    • サーバに一時的に膨大なアクセスが集中する「Flash Crowds」現象に対抗するネットワーク。CDNとP2Pを融合したもので、負荷に応じて自らのネットワークトポロジーを動的に変化させて負荷を分散する。世界規模ネットワークでの実験も実施した。
  • コンテンツ共有・配信の負荷分散における一つの究極形であるサーバ無しのネットワーク、つまりピアツーピア(Peer-to-Peer, P2P)ネットワークについて、次のような取組みを進めた。

    • クライアントサーバ型階層構成とP2P型対等構成との間で動的に相転移するネットワーク。
    • 自然発生的に出来上がるP2Pトポロジーを自律分散的に推定し、それに基づいてコンテンツ検索を最適化する方式。
    • P2Pエニーキャストを利用したウェブサービス発見。
    • 実際的・社会的な展開として、緊急地震速報の即時配信への応用。コンテンツプロバイダ企業と共同で設計開発中。
  • ネットワーク上を移動するモバイルスレッドの活用として、特にGRIDの動的最適化に適用して成果を挙げた。

システム設計方法論

  • LSI設計や組込みシステム設計において、ハードウェア/ソフトウェア未分化段階での設計は「システムレベル設計」とも呼ばれることがあるが、その高度化に向けて次のような取組みを進めた。

    • オブジェクト指向技術、特にデザインパターン、リファクタリング、アスペクトなどの適用。
    • UML・SysML・Action Semantics、MATLAB/Simulinkなどによるモデルベース設計。
    • プロダクトライン設計開発におけるバリエーションの扱い。
    • 組込みシステムのネットワーク化・分散化に向けたネットワーク通信の段階的詳細化設計。
    • アサーションベース検証の段階的詳細化。
    • 例えばプラント制御システム設計など、他分野への応用。
  • 並列システムやVLSIの抽象的仕様からの導出設計。特に、漸化式による数学的仕様から関数型ないし論理型プログラムの等価変換によって、シストリックアレイのハードウェアアルゴリズムを導出する設計方式について、原理構築から支援システム作成まで行った。さらに、関数型プログラミングでいうSkeletonによるメタレベル構造記述についても考察を進めた。

分散人工知能

  • 分散人工知能システム構築のためのプログラミング言語と処理系。パターン照合通信を採用して階層的プロセス構成を導入し、言語設計から処理系作成まで行い、他組織でのロボティクス関係の研究など実用にも供してきた。

  • 分散協調探索の応用。特に分散センサ網における多体軌跡推定問題について従来の手法から飛躍的な効率化を達成し、一方で、新たに考案した階層型協調を画像認識における動的輪郭モデルSnakesに適用して精度向上を果たした。

  • 遺伝的アルゴリズムのLSIハードウェア化。パイプラインや並列実行などハードウェア化に適した新たな遺伝的処理を導入し、世界的にも最高レベルの性能を達成し、さらにマルチLSIによる並列分散化も設計を行った。


連携組織・協力組織など

  • 長崎大学 楢崎研究室
  • 九州産業大学 下川研究室
  • LIVE! ECLIPSE プロジェクト
  • 日本信号 (株)
  • カルソニックカンセイ (株)
  • (株) コム・アンド・コム