修士論文要旨

P2P型オーケストレーションによるEdge/Fog Computingのモビリティ対応

菅原 大和 (2020年2月)

Cloud Computing(Cloud)は膨大なリソース(プロセッサ・メモリ・ストレージ・ネットワーク)を備えた計算基盤を用いるサービスの利用形態であり、Internet of Things(IoT)アプリケーションの基盤として応用されている。Cloudはサーバ仮想化やネットワーク仮想化の技術を用いて構築され、その上で計算やストレージなどの仮想的な機能をサービスとして提供する。これはオーケストレーションによって実現され、仮想的なリソースと物理的なリソースの管理、アプリケーションのプロビジョニングとデプロイメント、運用を担う。しかし、Cloudにおける通信の遅延とIoTデバイスによる膨大なデータ量の課題を解決するため、Edge/Fog Computing(Edge/Fog)が提唱された。Edge/FogはCloudの拡張であり、IoTデバイスとCloudの間に中間処理を担うEdge/Fog基盤を置くことで、低遅延な応答と処理の分散を実現する。

IoTデバイスはモビリティを持つものがあり、例としてスマートフォンやコネクテッドカーがある。Edge/Fogのモビリティ対応は、モバイルデバイスのモビリティを常に考慮して近くのEdge/Fogを用いるように調整することや、モバイルデバイスとEdge/Fogの間の多様なネットワークインターフェースに対処することである。一方で、サービスの需要がモビリティにより局所的に高まることがある。Edge/Fogでは、アプリケーションへの動的なリソース割当てや、近隣のEdge/Fogのリソースも用いて対処する。これらは集中型のオーケストレーションにより、リソースとタスクの情報を全体的に把握し、必ず対処する。

しかし、自動運転車などのリアルタイムな対応を必要とするIoTアプリケーションでは、モビリティ対応が遅延する問題がある。これは、集中型のオーケストレーションでは、Edge/Fogとオーケストレーションサーバでの通信がリアルタイムでなく、需要への即座な対応が困難なためである。また、階層型のオーケストレーションについても、需要の変化は集中的な方法で監視するため、リアルタイムな対応が困難である。特に自動運転車では、数百メートル先の障害物や物陰にいる人の情報を即座に入手する必要があり、対応の遅れは致命的な事故を引き起こす恐れがある。したがって、IoTアプリケーションのデプロイメントの再構成はリアルタイムな対応を必要とする。これは、Edge/Fogノード同士が無線方式でリアルタイムに通信できる場合に、隣接したノード間でオーケストレーションを行うP2P型のみ対応可能である。しかし、このようなP2P型オーケストレーションで、Edge/Fogのモビリティ対応は未提案である。そこで本研究では、リアルタイムに通信できるEdge/Fogノード同士でP2P型オーケストレーションを行い、自動運転車のように遅延への厳しい制約がある場合でも対応可能な新しい手法の提案を目的とする。

提案手法では、先行事例の成果から、オーケストレーションに必要な情報を数ミリ秒オーダ程度の遅延で分散管理する手法と、無線方式に第5世代移動通信システムを用いるEdge/Fog基盤を適用した。これによりP2P型オーケストレーションのモビリティ対応について、デプロイメントを即座に再構成するリアルタイム対応の新しい方式を提案した。