修士論文要旨

Event-Trigger型のコンテンツ指向RPL

木村 祐貴 (2020年2月)

近年、我々の生活を取り巻く「モノ」がインターネットに接続されることで、様々なサービスやアプリケーションを提供するIoT(Internet of Things)が注目されている。IoTデバイスは無線通信技術やセンサ技術の発達、クラウドの登場により爆発的に増加している。それに伴い、IoTトラフィックも増加傾向にあり、データの種類も多種多様となっている。

IoTデバイスの中には、処理能力やバッテリーなどの資源制約や通信条件が厳しいデバイスも存在する。そのようなデバイスから構成されるLLN(Low-power and Lossy Networks)向けのルーティングプロトコルとしてRPL(IPv6 Routing Protocol for Low-Power and Lossy Networks)がIETFによって提案され、標準化されている。通常のRPLでは、全てのデータはデータの種別に関係なく同じ経路でゲートウェイまで配信される。しかし、異種データ同士は経路上の中継ノードで集約処理ができないため、トラフィック量の増加やノードの負荷が高くなる。その解決策として、データの種別ごとにオーバーレイネットワークを構築し、データ集約を促進するコンテンツ指向RPLが提案されている。

コンテンツ指向RPLで提案されている手法は、全てのノードが決められた時間にデータを送信するTime-Trigger型のアプリケーションを想定している。そのため、データを送信するノードや時間が不定であるEvent-Trigger型での適用は、事前のスケジューリングが難しいことに加えて、集約率の低下やデータの遅延につながる。また、提案されている目的関数は、すべての子ノードからデータを受信する前提で定義されている。そのため、一部のノードのみがデータを送信するEvent-Trigger型の場合、期待したようにデータが集まらず、目的関数の機能が低下する可能性がある。

そこで、本研究はデータパケットに配信期限を設定し、各データが配信期限を満たし、かつ、集約率を確保するために可能な限り集約・転送時間を遅らせ、データの送信タイミングが不定なEvent-Trigger型に適したコンテンツ指向RPLを提案した。さらに、Event-Trigger型向けの目的関数を提案し、集約率を高めることで、データパケットのトラフィック量の削減を目指した。

シミュレーション実験の結果、提案手法はEvent-Trigger型においても、各データが配信期限を満たし、かつ、集約率が高く、ノードのエネルギー消費の削減が可能であることを確認した。また、提案した目的関数は集約率を高め、データトラフィックの削減が可能であった。