修士論文要旨

MANETにおけるCooperation Enforcementによる協調誘引

土屋 拓也 (2019年2月)

Mobile Ad-hoc Networks(MANET)とは、無線端末(ノード)同士が直接的に通信を行う、その場限りで構築されるネットワークである。その通信には通信基盤を必要としないため、災害現場やイベント会場などで一時的に利用するネットワークとして構築することが考えられている。MANETの実装にはその特徴から様々な課題が残されているが、その中でも電力消費、経路制御、セキュリティは重要な課題である。

セキュリティの面においては、特に、自身の利益のみを考えて行動するセルフィッシュノードの存在は、パケット到達率の低下やノードのバッテリー減少に繋がる。この解決策として、各ノードに報酬や罰を与えることでノード間の協調を促すCooperation Enforcementが考えられている。Cooperation Enforcementには評判ベースと報酬ベースの二つの手法があり、本研究では、報酬という目に見える利益を与えることでより協調を促すことができると考え、報酬ベースの手法に焦点を当てる。報酬ベースの手法では、協調動作による利益として報酬(金銭や仮想通貨)を用いる。具体的には、パケットを転送したノードは報酬を受け取り、サービスを利用する(自身のパケットを転送する)場合は転送ノードに対価を支払う。しかしこの手法は、金銭を十分に持つノードの協調を促せないという課題がある。

そこで本研究では、全てのノードの協調を促しパケット到達率を向上させるため、ネットワーク貢献度の導入とそれに応じた対価の支払いを提案した。ネットワーク貢献度はパケット転送などの協調動作により定め、また支払う対価をどのような関数形に従うのが良いのかの比較も行った。そして、提案手法の有用性を確認するために、一台の計算機上に擬似的なMANETを構築するシミュレータを作成し、ネットワーク貢献度の導入前後における変化や様々な関数形において比較・評価を行った。シミュレータ実験の結果、ネットワーク貢献度導入前に比べ協調するノードが増え、パケット到達率が向上することを確認できた。また、それぞれの関数形においての結果を比較することで、例えば関数の指数を一定以上大きくしてもパケット到達率やノードが協調するまでの時間は変わらないなどの特徴が確認できた。