修士論文要旨

VANET上のPassive Clusteringによる情報収集配信

倉橋 渉 (2019年2月)

Vehicular Ad-hoc Networks(VANET)とは、車両が無線通信により情報をやりとりするネットワークであり、車両と基地局の通信であるVehicle-to-Infrastructure(V2I)と車両同士の通信であるVehicle-to-Vehicle(V2V)で構成される。現在、車両に搭載されたセンサが捕捉した情報を基地局へ送信し、集約や解析を行った後、各車両へ有益な情報を配信するという利用形態が注目されている。これにより、渋滞情報の共有による交通流の改善や、危険地点の配信による交通事故の防止などが期待できる。

しかし、そのような利用形態では、車両と基地局が大量の情報をやりとりすることでV2Iの帯域を浪費し、通信衝突などが生じてしまう。また、車両と基地局は地理的な遠距離に存在するため、通信遅延が発生する恐れがある。よって、緊急車両情報のような動的な情報を扱う場合、その情報が有効な時間内に届けられない可能性が高い。

V2Iの帯域浪費を抑制するために、クラスタリングの活用が提案されている。クラスタリングとは、車両をクラスタと呼ばれる小集団に分類することであり、各クラスタでは1台の代表車両が選出される。クラスタを利用した情報収集配信では、代表車両のみがV2Iを利用して基地局と通信し、クラスタ内のその他の車両はV2Vで代表車両とのみ通信する。このようにして、V2Iを利用する車両台数を減少させる。しかし、従来のクラスタリングでは、クラスタ構築に車両と基地局の間の頻繁な通信が必要であるため、V2Iの帯域を浪費する恐れがある。また、クラスタ内の車両は代表車両を介することでしか基地局とやりとりできないため、通信遅延は増大してしまう。

そこで本研究では、クラスタリングと目的の処理を同時に実行するというPassive Clusteringの考え方を、情報収集配信に導入する方法を提案する。すなわち、情報収集配信のための通信にてクラスタリングに必要な情報をやりとりすることで、クラスタ構築のためだけのV2Iの利用を回避する。さらに、クラスタの代表車両に動的情報の配信を実行させることを提案する。クラスタ内の車両同士は地理的な近距離に存在するため、低遅延での情報のやりとりが可能になる。本研究では、これらの提案を踏まえたシミュレータを実装し、実験を行った。その結果、V2Iの帯域浪費の抑制と情報配信遅延の低減を確認した。