修士論文要旨

Edge Computingにおけるデータ処理機能のネットワーク展開

平沼 龍一郎 (2019年2月)

近年、様々な「モノ」を新たにインターネットに接続するInternet of Things(IoT)が普及し、現実世界のあらゆる事象がデータとして収集されている。IoTデバイスによって収集された巨大なデータはBig Dataと呼ばれ、Big Dataを分析することで様々な利益を得ることができる。そして、Big Dataの分析結果は工学や自然環境、人々の暮らしに還元され、現実世界で実用的に活用されている。

現在、Big Dataの分析基盤として、高い処理能力と莫大なストレージを備えるCloudが利用されている。Cloud上では、Big Data分析における一連の処理の流れをWorkflowと定義し、管理システムがWorkflowを動的に制御している。しかし、Cloudのみを用いたBig Data分析では、Big Dataの爆発的な増加によるCloudの負荷増大や、CloudとIoTデバイスが物理的に離れていることで生じる伝送遅延などに対処できない。そこで、IoTデバイスとCloudを結ぶネットワーク上に、Cloudletなどと呼ばれる中間処理基盤を配置するEdge Computingが提案された。Edge Computingにより、Cloudの負荷をCloudletに分散したり、IoTデバイスと近距離に位置するCloudlet上で、リアルタイム性の高い処理を実行できる。さらに、仮想ネットワークを構築・制御するSoftware Defined Network(SDN)を用いることで、Edge Computingを拡張する研究が進められている。SDNを用いて、CloudとCloudletを仮想的に接続したり、複数のCloudletで仮想ネットワークを構築することで、ネットワーク全体をデータの処理基盤として活用できる。

Edge Computingでは、IoTデバイスの移動や各Cloudletの負荷状況の変化に対応するため、ネットワーク上でWorkflowを動的に制御する必要がある。しかし、CloudやCloudletを含むネットワーク全体で、Workflowを動的に管理する手法については未だ提案されていない。そこで本研究では、ネットワーク機能を仮想化するNetwork Functions Virtualization(NFV)の考え方を新たに導入し、Edge Computing上でWorkflowの動的な管理を実現するシステムを提案する。提案システムでは、データ処理機能を仮想化し、CloudやCloudletを含むネットワーク全体に展開する。また、仮想化したデータ処理機能を動的に制御する管理機能を配置し、ネットワーク全体を活用した柔軟なBig Data分析を実現する。本研究では、提案システムの具体的なユースケースを用意し、実際にBig Data分析を提案システム上で実現可能か検証を行った。検証の結果、Big Data分析における提案システムの有用性を確認できた。