修士論文要旨

マルチセルRANにおけるネットワークスライシング

福田 拓也 (2019年2月)

モバイルデバイスの増加だけでなく、あらゆるモノが繋がるIoT(Internet of Things)の発展普及は、医療、自動車等の様々な業界でデバイス利用を導くことから、移動通信ネットワークのトラフィックは更に増加すると考えられる。こういった将来に応える移動通信システムとして、2020年から運用予定の第5世代移動通信システム(5G)が注目されている。5Gでは「高速・大容量」、「多数同時接続」、「低遅延・高信頼」のコンセプトのもと、様々な領域において多種多様なサービスが利用されることとなる。5Gでは様々なユースケースが想定され、サービス品質を表すQoS(Quality of Service)の要求もまた異なる。そこで、サービスやデバイスの種類ごとに異なるQoS要求に合わせた柔軟な通信を提供するために、ネットワークスライシング技術が用いられる。

ネットワークスライシングは、物理ネットワーク通信基盤を仮想的に分割可能な資源として管理し、それら仮想資源を組み合わせたスライスとして提供する。各スライスは、QoS要件を満たすのに十分な性能でのみ提供される。このようなネットワークスライシングは、資源効率の向上を目的とする他、同じ物理設備を共有し、設備導入等のコストを削減も可能となる。しかしながら、ネットワークスライシングの技術は構想段階であり、いまだ仕様が明確に定まっていない。中でも、サービスやデバイスからの多様なQoS要求を適切なスライスに割り当てる手法は研究が進んでいない。特に、マルチセルRAN(性能の異なる複数のセルで構成されるRadio Access Network)環境におけるスライシングは、いくつか提案されているが、1つのデバイスが1つのセルとだけ通信することによって、セルの切り替えの頻発や不適切なセルの割り当てなどの問題が起こる。

そこで、本研究では上述した問題の解決を目的として、1つのデバイスが複数のセルと通信可能となる「Cell Type Assignment(CTA)」という新たなRANリソース管理のレベルを導入し、モビリティ特性とサービス特性を考慮した動的かつ柔軟なスライス割り当て手法の提案した。そして、提案手法の評価を行うために、計算機上でシミュレータを作成し、実験を行った。その結果、本研究の提案手法により、セルの切り替え減少や適切なセル割り当てが行われていることを確認できた。