修士論文要旨

動体追跡用の無線センサネットワークにおける間欠的停止故障への対応

鶴和 義之 (2018年2月)

無線センサネットワークとは、無線通信機能およびバッテリなどの電源を備えた多数のセンサ機器(ノード)で構築されるネットワークである。ノードを施設や環境など様々な場所に配置することで多様な情報を収集し、それに基づいた制御を行うことができる。ノードはバッテリ駆動でありながら長時間観測を行う能力が必要であることから、バッテリ消費の効率化が強く求められている。

近年では、観測環境全体の情報ではなく環境内を動く特定の対象の動き、例えば不審者の移動経路や野生動物の行動などを把握する需要が発生しており、それを実現する技術である動体追跡が研究されている。動体追跡手法ではバッテリ消費の効率化を、過去の観測情報から対象の動きを予測し、観測に参加するノード数を削減することで実現している。この予測精度を低下させ、対象の追跡を失敗させる要因の一つとして、入力に対して一切出力を返さない永続的停止故障が挙げられる。この故障はノードが破壊されるもしくはバッテリが枯渇することで発生する。

そこで本研究では、故障ノードを検出するためのパケットや動作を必要とせずに動体追跡を実現する手法であるAASA(Auction-based Adaptive Sensor Activation)に着目した。AASAを用いることによって、故障ノードの影響を排除して動体追跡を実現することができる。しかし、現実的にはノードを構築するモジュール間での接触不良などで発生する、入力に対して出力がある場合もない場合もある間欠的停止故障も発生すると考えられる。そこで本研究では、間欠的停止故障にも対処することを目的として、AASAを拡張した。具体的には、ノードが診断履歴を保持するよう拡張し、過去の診断結果から間欠的停止故障を特定することを提案した。そして、提案手法の有用性を確認するため、1 台の計算機上に擬似的な無線センサネットワークを構築するシミュレータを実装し、間欠的停止故障が存在する環境でAASAと比較することで提案手法の検証・評価を行った。

検証の結果、提案手法を用いることにより間欠的停止故障したノードが対象の観測に参加することが抑制され、追跡が失敗する可能性が低下したことを確認した。また、生存ノード数の減少を抑え、AASAよりも長時間運用可能であることも確認した。さらに、AASAと同等のパケット総数で動体追跡が実現可能であることも確認した。