修士論文要旨

MANETへのContent Centric Networkingの適用におけるキャッシュの効率化

市川 亮佑 (2018年2月)

近年のインターネットは、コンテンツに注目する「コンテンツ指向」のアプリケーション層と、コンテンツを所持するホストに注目する「ホスト指向」のネットワーク層で、注目点の乖離が生じている。これを解消するため、コンテンツ名で経路制御を行うContent Centric Networking(CCN) が提案されている。このような乖離は、Mobile Ad-hoc Networking(MANET)というモバイル端末(ノード)同士で自律的に通信を行うネットワークでも発生している。

本研究では、MANET上のコンテンツ共有にCCNを適用する。CCNでは、コンテンツ名と対応付けて、各機器がコンテンツそのものをキャッシュすることができる。そのためコンテンツ要求者は、コンテンツ名で要求を出し、オリジナルのコンテンツだけではなく、コンテンツをキャッシュしている機器からもコンテンツを取得でき、コンテンツの検索・取得を効率化できる。

MANETは、基地局などの通信インフラを用いず通信を行えるため、災害時やイベント会場で利用できるネットワークとして注目を集めている。MANETの各ノードはバッテリー駆動であり、電力供給能力やストレージに制約があり、CCNをMANETに適用する際には、キャッシュ配置数を抑制する必要がある。本研究では、コンテンツ取得効率をできる限り落とさずに、配置数を抑制するキャッシュ配置手法の提案を目的とする。

本研究ではMANET上で提案された、社会ネットワークの特性を利用してコンテンツ共有を効率化するChenらの手法を応用して、キャッシュ配置手法の提案を行うことを提案する。社会ネットワークの特性とは、社会的な繋がりを持つ個人が持つ特性のことであり、MANETのノードは人間により運ばれるためこの特性を持つ。Chenらは社会ネットワークの特性の一つである「類似した興味を持つノード同士は、それ以外のノードと比べて頻繁に会う傾向がある」という特性に着目し、類似した興味を持つノード同士でコミュニティと呼ばれるグループを作り、その中で優先的にコンテンツ検索を行うことでコンテンツ共有を効率化した。Chenらの手法はCCNを用いていない。本研究では、興味ごとにグループを作る Chenらの手法をCCNの経路制御手法に応用し、興味が一致したコンテンツのキャッシュのみを保持することで、目的のキャッシュ配置手法の提案を目指す。そして、シミュレーション実験で、キャッシュ抑制が達成できることを示した。