卒業論文要旨

SDNによるストレージ・バックアップの実装

阿部 尚哉 (2020年2月)

現在、私たちの生活において重要なインフラである水道、電気、ガスに並んで、インターネットは非常に重要な位置を占めるようになった。また現代では、情報をデータとして電子的に保存し、活用することが一般的になっている。2019年末に発生した全国の自治体データ消失を例にげるまでもなく、データが失われてしまうと日常生活に多大な影響を及ぼす可能性がある。加えて、インターネットは日々複雑に拡大しており、大規模になったインターネットを完全に制御することは難しい。このような状況下で、データの重要性が高まっているため、データの可用性を今以上に向上させる必要がある。

そこで、本研究では、各ネットワーク機器における制御に関わる機能と、データ転送に関わる機能を分離して、制御に関わる機能を集中制御するSoftware Defined Networking(以下SDNとする)という概念に注目した。SDNを用いてプライマリデータセンターとユーザー間の通信を制御することができれば、通信時に経路上で障害が発生した場合でも、制御部を集中管理しているため即座に障害を検知することができ、プライマリデータセンターからバックアップデータセンターへ接続を切り替えて、再びアクセスしたいデータへ障害の影響をあまり受けることなくアクセスできるのではないかと考えた。

先行研究では、データの可用性を向上させるために、データセンターとの通信においてSDN-castという特別な仕組みを実装し、データセンターにデータを保存する前に、ユーザーから送信されたフローを複製すること、接続していたデータセンターへアクセスできなくなった場合に、バックアッフプデータセンターへ接続を切り替えるということを検証している。

先行研究におけるSDN-castは、設計概要が示されているものの、実装方法が不明である。そこで本研究では、SDNを用いて一般的なエニーキャストとマルチキャストを実装する手法を提案し、検証した。検証した結果、エニーキャストについては、 データセンターとスイッチ間の接続に異常が生じた場合、手動でその異常を検知し、その後、通信可能なバックアップデータセンターへ接続を切り替えることが実現できた。マルチキャストについては、UDP通信を用いてマルチキャストグループを作成し、そこにマルチキャストに参加させたい端末を追加することで、ストリーミング配信を行う端末側から、マルチキャストグループに与えられた一つのIPアドレスに向けてデータを送信することで、マルチキャストグループに参加している端末にデータを一括送信することが実現できた。