卒業論文要旨

IoTセキュリティに向けたブロックチェーンと有向非巡回グラフの比較分析

池田 篤 (2019年2月)

モノがインターネットに繋がることが経済や社会保障などの面で生じる課題を解決する手段になるとして、Internet of Things(IoT)が注目を浴びている。そのため、今後もIoTを用いた技術が数多く開発され、様々なところで利用されることが予想される。しかし、IoTにはセキュリティの面で多くの課題がある。IoTデバイスは電力や計算リソースが限られている物が多いといった点や、IoTデバイス数が多く管理するのが大変であるといった点から、セキュリティを確保するのが大変である。

一方、暗号通貨が、銀行が中央管理者となり取引を管理する従来の中央集権型のシステムではなく、暗号通貨の参加者同士で直接取引を行う分散型のシステムであるという点や、中央管理者が存在しないために取引手数料が安く済むといった点から注目を浴びている。暗号通貨は参加者全員が全ての取引を記録する台帳となるBlockchain(BC)を保持しており、このBCからお互いの取引を監視し合うという仕組みになっている。この仕組みは暗号通貨の先駆けである仮想通貨Bitcoinで初めて用いられた技術であり、この分散型のシステムは暗号通貨だけでなく様々な分野で応用されることが期待されている。

分散型システムの応用が期待される分野の一つにIoTがある。例えばIoTにBCを適用させることで先に述べたIoTの様々な課題を解決できるのではないかと研究が行われている。しかし、IoTにBCを適用させるにあたり大きな問題がある。それはIoTデバイスのリソースの問題である。BCはマイニングと呼ばれるブロックを生成する作業を行わなければいけないのだが、マイニングを行うのに多くの計算リソースを必要とする。そのため、BCのマイニングを簡単にするといった軽量化を行わなければいけないのだが、軽量化を行うことによってセキュリティ強度が弱くなってしまう可能性がある。

そこでBCの代わりとして、同じく暗号通貨で用いられている技術であるDirected Acyclic Graph(DAG)に着目した。DAGは有向非循環グラフのことで、一方向にしかデータを送れないエッジと、データを送信(転送)するノードから構成されているグラフである。またデータの送信者に同じデータが戻ってこないように設計されているという特徴もある。暗号通貨IOTAでは、Tangleと呼ばれるトランザクションをノードとしたDAGを用いており、Blockchainに比べてIoTに適用しやすいと考えられている。

本研究では、仮想通貨Bitcoinで用いられているBCと暗号通貨IOTAで用いられているTangleのDAG、2つの技術についての比較及びIoTに適用できるかの分析を行った。その結果、マイニング及びスケーラビリティの点から見るとDAGの方がIoTに適用しやすく、一貫性及び承認の点ではBCの方が適用しやすいということが分かった。