修士論文要旨

SDN障害対策におけるプロアクティブ方式とリアクティブ方式の融合

阿部 尚哉 (2022年2月)

情報通信技術は重要な生活基盤の一つであり、災害などの影響で起こる経路障害によってネットワークへ接続できない状況に陥ることは大きな問題となる。SDN(Software Defined Networking)は、各ネットワーク機器で行う経路制御部とデータ転送部を分離して実装する概念である。これにより、経路制御を一括で管理することができるため、より簡単に経路障害にも対応することができる。本研究では、柔軟に経路障害に対応できるネットワークを構築するために、SDNを用いたネットワークにおける、災害等の影響によって発生する経路障害からの復旧に注目した。

SDNにおける経路障害対策は、プロアクティブ方式とリアクティブ方式に大別される。前者は、迂回経路をコントローラがあらかじめ用意し、事前にスイッチにインストールする手法である。障害発生時にはスイッチ単体で障害から復旧可能だが、スイッチが保持するフローエントリ数が増加し、通常のパケット処理速度が低下する恐れがある。後者は、障害発生後に迂回経路をコントローラが計算して新しいフローエントリを作成し、スイッチにインストールする手法である。経路障害の状況に応じて柔軟な復旧が可能だが、迂回経路計算のための通信や探索が復旧時間に影響する可能性がある。そこで本研究では、場合に応じてこれらを使い分ける、両手法を融合した新たな手法を提案する。

提案手法では、通常はプロアクティブ方式を用いて経路制御を行う。プロアクティブ方式の実装には、スイッチ単体で障害を検知し、経路制御を行うことを可能にするGroup TableのFAST FAILOVERを使用する。一方で、プロアクティブ方式で用意した経路全てが使用不可になった場合には、コントローラでリアクティブ方式を起動する。リアクティブ方式では、使用可能な経路情報を取得後、迂回経路として新たなフローエントリを作成し、該当するスイッチにインストールすることで、経路障害から回復することができる。また、プロアクティブ方式で使用する経路における障害が全て回復した場合、再びGroup Tableを用いて通信を行えるようにするため、プロアクティブに用意していたフローエントリを再度各スイッチにインストールする仕組みを構築した。本研究では、OpenFlowコントローラにRyuを用いて経路制御用のアプリケーションを作成し、Mininetで作成した仮想トポロジ下による実験で動作を検証した。また、提案手法が両方式を補い合う形で経路障害に対応できることを確認できた。