修士論文要旨

CCNにおける移動予測に基づいた事前キャッシュ

山本 雅也 (2021年2月)

近年、IoT通信に適したCCN(Content Centric Networking)/ NDN(Named Date Networking)(以下、CCN)が注目されている。CCNは、IPアドレスを用いずにデータ名に基づいて各ルータで経路制御を行うネットワークアーキテクチャである。IoTでは、必要なデータが取得できるならばIPアドレスを必要としないため、CCNがIoTに適している。しかし、車両のようなIoTデバイスはネットワーク内を移動し、接続ルータを変更しなければならない。それに伴い、通信経路が切断され、通信経路の再構築が必要となる。それによりデータ取得までの通信遅延が発生する。なお、本研究では、複数の車両の中から特定車両の特定のセンシングデータのみをサーバ(以下、データ要求元)で収集・分析を行う車両交通情報処理を想定する。そのため、IoTデバイス(以下、データ配信元)側の移動のみを考慮する。

この解決策として、プロアクティブキャッシュが考えられている。プロアクティブキャッシュは、接続ルータがセンサを用いてデータ配信元の移動を予測し、移動前の接続ルータにデータを事前にキャッシュを行う手法である。プロアクティブキャッシュをCCNに適用することで、データ要求元はデータ配信元の移動後でも、ルータからデータ取得が行えるため、通信遅延が抑制される。キャッシュ処理に伴うオーバヘッドが発生するが、データ配信元の接続ルータの切り替えが頻繁に発生する環境でも、低遅延なデータ取得が可能である。プロアクティブキャッシュでは、キャッシュの書き換えにより、経路の再構築に前にキャッシュが削除され、キャッシュによるデータ取得が行えず、遅延が発生する場合がある。以前の接続ルータからホップ数の少ない(近い)接続ルータに切り替わる場合、対象の上流ルータのみに更新パケットを送信するだけで、通信経路の再構築が完了する。そのため最小限の更新パケットで通信経路を更新できるので、経路更新までの遅延を最小限に抑える。そこで、本研究では、通信経路の再構築に時間を要する(遠い)IoTデバイスの接続ルータの切り替えに対してのみ、プロアクティブキャッシュを行えば、キャッシュ処理を抑制し、継続的な通信が行えると考えた。

そこで本研究では、上記のような遠いIoTデバイスの接続ルータの切り替えに対してのみ、事前キャッシュを行う手法を提案し、提案手法の有用性を確認するために、本研究の想定環境をシミュレータに実装し、実験を行った。その結果、従来のプロアクティブキャッシュよりも少ないキャッシュ処理で高いパケット到達率を示し、提案手法の有用性を確認した。今後の課題としてネットワークトポロジーを変化させた場合等の影響を検証する必要がある。