修士論文要旨

DAGに基づく分散台帳の軽量IoTネットワーク上の実装

池田 篤 (2021年2月)

Internet of Things(IoT)のセキュリティ課題に、ネットワーク内のデータの盗聴や改竄といった課題が存在する。この課題に対処する手法の一つに分散台帳の利用がある。分散台帳とは中央管理者の介在なしに、ネットワーク内の参加者のみで情報を管理、監視し合う技術である。代表的な分散台帳にBlockchain(BC)が存在するが、BCは多くの計算リソースを必要とし、計算リソースの限られたデバイスで構成されるIoTにおいてはBCは適用させづらい。そこで本研究ではIoTに適用させることを目的として作られた分散台帳であるTangleに着目した。TangleをIoTに適用させる研究も様々行われているが、IoTのプロトコルやネットワークトポロジーまで踏み込んだ研究は乏しい。そこで本研究ではTangleを適用させるIoTとしてIETFで標準化されているルーティングプロトコルであるRPL(IPv6 Routing Protocol for Low-Power and Lossy Networks)に焦点を当てた。そしてTangleとRPLを組み合わせた手法を提案し、シミュレータ実験を行った。

提案手法ではTangleのレイヤとRPLのレイヤとの2つのレイヤに分割する。RPLレイヤでは各IoTデバイス(以下ノード)がルートノードを頂点としたDODAG構造のネットワークを形成する。一方、Tangleレイヤは各ノードが保持している固有のTangle同士で形成されるレイヤである。各ノードが新規のトランザクションを作成した場合、RPLに従い親ノードを介してルートノードまで送信される。親ノードはトランザクションを転送しつつ、自身のTangleにも追加する。親ノードにしかトランザクションが送信されないとランクの低いノードのトランザクションは他のノードでは確認されづらく承認されづらいため、ルートノードからブロードキャストを定期的に行う。上記の手法をシミュレータで実験した結果、動作を確認することができた。この結果によりRPLのTangleへの適用が可能であることを示した。今後はIoTデバイスの計算リソースや消費電力についての考慮しつつ、ノード数を増加させた際の動作について検証を進めて行きたい。そして最終的に実在する軽量IoTネットワーク上でのTangleの実装を目指す。