修士論文要旨

エッジコンピューティングにおける端末通信コストも考慮したタスク割り当て

相澤 聡至 (2021年2月)

クラウドコンピューティングでは、サービスを利用するユーザ端末とクラウドの物理的な長距離通信に起因して、往復で数百ミリ秒から数秒の伝搬遅延が発生する問題がある。この問題を解決する新しいコンピューティングパラダイムであるエッジコンピューティングでは、エンドユーザとクラウドの間に中間処理基盤を設置することにより、ユーザに物理的に近い場所にある計算資源でのタスク処理を可能にし、ミリ秒単位の低遅延なレスポンスを実現する。また、クラウドへの処理要求を一部肩代わりすることで、クラウドやネットワークへの負荷を軽減する効果も期待される。

エッジコンピューティングにおいて問題となるタスク割り当てとは、サービスを構成する複数の実行タスクを、ネットワーク内の各計算資源に割り当てることである。エッジコンピューティングにおいてはクラウドとエッジでタスク処理の特性が異なり、タスクによってもその処理負荷や遅延制約といった条件が異なるため、これらが全体として最適となる割り当てを決定することは非常に難しく、タスク割り当ての最適化は一般にNP困難な問題である。様々な最適化目標が存在する中で、ネットワーク全体の通信コスト(以下、ネットワークコスト)低減を目指すタスク割り当て手法がいくつか提案されている。しかしながら、それらの割り当て手法ではユーザ端末を無視したモデルが採用されており、端末通信コストがネットワークコストに反映されない。このため、端末通信コストも含めたネットワークコストを極小化できないことが課題である。

本研究ではこの課題に対処するため、端末通信コストも考慮した割り当て手法を提案した。具体的には、従来のモデルで扱っていたデバイスグラフ・タスクグラフそれぞれに対して、ユーザ端末を表すノード・ユーザ端末で実行されるタスクを表すノードを追加したモデルを採用した。この改良によって、端末通信コストを含めたネットワークコストの評価が可能となり、ネットワークコストを極小化する割り当てを求めることができる。提案手法の有用性評価のため、1台の計算機上で疑似的にネットワーク生成・タスク割り当てを行うシミュレータを作成し、従来手法と提案手法の比較実験を行った。実験の結果、提案手法が従来手法よりもネットワークコストを削減することを確認した。