卒業論文要旨

構造型P2Pを応用した分散型ICN

小熊 崇将 (2021年2月)

近年、インターネットに接続する端末数の急激な増加などによって、インターネットのトラフィックが飛躍的に増大している。現在のインターネットは依然としてIPアドレスにより通信相手を指定することで通信が行われているが、ユーザにとっては、目的のコンテンツさえ取得できれば、その通信相手が誰であるかは重要ではない。すなわち、ユーザの利用形態と実際の通信方式の間に齟齬が生まれており、これにより、コンテンツ取得までの遅延や、特定のサーバへの負荷集中などといった問題が発生している。そこで、IPアドレスではなくコンテンツの名前を用いて経路制御を行うContent Centric Networking(CCN)が提案され、注目を集めている。

CCNでは、コンテンツの内容に基づいて付けられるコンテンツ名のみを用いて経路制御を行う。これを実現するため、各ルータはコンテンツの所在情報をブロードキャストすることで、ネットワーク内の全てのルータにコンテンツの所在情報を通知する。しかし、この動作を行うことにより、ネットワーク内にパケットが充満し、トラフィックが増加してしまう。また、この動作は、コンテンツの所在情報を全てのルータに通知するという観点からも、全てのルータが全てのコンテンツの所在情報を持たなければならないという観点からも、非効率である。

同様の問題は、かつてP2Pネットワークでも発生していた。P2Pネットワークは、ネットワークに接続している各ノードがコンテンツの提供と要求の両方の役割を担うことができるネットワークである。そして、この問題の解決策として、分散ハッシュ表を用いて構造化を行った構造型 P2P が提案され、コンテンツの所在情報のブロードキャストを排除することに成功した。

そこで本研究では、CCNと構造型P2Pの技術を組み合わせた新たな分散型ICNを提案し、トラフィックの抑制や、コンテンツ転送の効率向上の実現を試みた。そして、1台のコンピュータ上に仮想的にネットワークを構築するシミュレータを実装し、従来のCCNと比較することで、提案手法の有用性の確認を行った。実験の結果、提案手法を利用することにより、コンテンツの所在情報のブロードキャストを排除し、トラフィック増加の抑制およびコンテンツ転送の効率向上を実現できることを確認した。